横浜市中区尾上町 内科 外科 消化器内科 循環器内科
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下肢静脈瘤

下肢静脈瘤日帰り手術

当院では、TLA麻酔と呼ばれる局所麻酔と静脈麻酔を組み合わせた日帰り根治術と麻酔が少ない新しい治療(グルー治療)を行っております。術後は歩いて帰宅可能で、その日から日常生活範囲の動作は支障なく行えます。そのため、入院を望まない方や仕事が休めない方には、便利かと思われます。シャワーは翌日から、運動も1週間後より可能です。
下肢静脈瘤日帰り手術の現在の標準治療である血管内焼却術は、2011年より保険適用となりました。当院は、その頃よりレーザー焼灼術を採用し、現在ではメディコス1台、ダイオテック3台、RF(ラジオ波)2台の機器を使用し治療を行っております。患者様の症状に合った機器を選択いたします。また、2019年12月より保険適用となったグルー治療の採用を開始し、必要とする患者様へ治療を提供できることとなりました。手術は下肢静脈瘤の手術を得意とする複数の血管外科医が執刀いたします。
当院では下肢静脈瘤の治療を血管外科単科だけでなく総合診療科の一つとして捉え、取り組んでいることも特徴です。消化器、循環器などの内科や整形外科など複雑な要素を総合的に診断し、特に難治性の高い症例や再発をくりかえすケースなど、下肢静脈瘤の軽度重度にかかわらず、状態により患者様に合った手術方法を選択していきます。

診療の概略

初診当日に血管外科医による下肢血管超音波検査を行い、静脈瘤の原因部位を探り、また深部静脈の観察、動脈硬化の有無を同時にチェックいたします。
その後、手術の補助療法として不可欠な弾力ストッキングを処方し、下肢静脈瘤の病態、手術術式、麻酔、リスク等につき説明させて頂きます。
手術日程は、初診時または症状により通院後経過を見てご予約して頂きます。手術をご希望された段階で、術前検査(心電図、心エコー、胸部X線、採血)を行います。
ただし、ご紹介元からのデータ、または健診結果がある場合は、それらを参考にさせて頂いております。
手術自体は、個人差はありますが下肢1本につき30分ほどで終了いたします。その後、2~3時間ほどお休み頂き、ご帰宅となります。

下肢静脈瘤について

1.症状

下肢静脈瘤は、一般に年齢とともに増加し、脂肪の多い人、女性に多く、妊娠を契機(特に第二子出産後)として発症することが多い病気です。また長時間の立ち仕事、重い荷物を扱う職業の人、スポーツマンに下肢静脈瘤は多く、家族歴のある人すなわち遺伝の関与も指摘されています。一般に以下のような症状があります。

(1)あしの静脈が瘤のようにふくらんでいる、静脈が目立ってスカートがはけない。
(2)あしが「おもい、だるい」「つる、こむら返り」「むくむ」「いたい」「かゆい」。
(3)あしの「湿疹」「皮膚硬化」「色素沈着」「出血」「皮膚潰瘍」など。
(4)極まれに「肺梗塞による息切れ、突然死」の報告もあります。
(5)下肢静脈瘤の治療をする理由として美容的な悩みからおこなうこともあります。

2.病因、概略

血液は心臓ポンプ作用により動脈血として、全身にいきわたり、毛細血管を介して静脈血となり、全身から心臓へ戻ってきます。その際、心臓ポンプの力は、動脈までしか作用しません。特に足の静脈では、ふくらはぎの筋肉運動により静脈が揉まれて、心臓の方向へ静脈血を押し出して、ゆっくりと心臓に戻って行きます。一度筋肉ポンプの作用で上に押しあがった静脈血の重力による逆流を防いでいるのが、静脈弁(逆流防止弁)です(図1-a)。正常な状態では、静脈の中を流れる血液が重力によって下へ引っぱられるのをこの逆流防止弁がくい止めています。断面で見ると、弁は八の字をしており、上方(心臓への方向)にのみ一方通行で血液が流れるよう働いています。
この弁が何らかの原因で壊れ、血液が逆流してしまい、長い年月を経て静脈が瘤のように膨らんでくる。これが下肢静脈瘤という病気です(図1-b)。

足の静脈には、筋肉の中の深いところにある深部静脈と、皮下の浅いところを走る表在静脈の二つの系統があります。表在静脈にも二つの系統があり、ひとつは大伏在静脈と呼ばれ脛の内側、大腿の内側を上行し、足の付け根(鼠径部)で深部静脈に合流します。もう一つは小伏在静脈と呼ばれ、ふくらはぎを上行し、膝の裏側で深部静脈に合流します。(図2)これら表在静脈の深部静脈への合流部は高い圧がかかりやすく、逆流防止弁の壊れやすいところで、こうした理由により、大伏在静脈や小伏在静脈は静脈瘤の好発部位となっています。

3.検査

下肢血管超音波検査(血管エコー)を行っております。これは、痛みのほとんど無い検査であり、なおかつダイナミックに血流の情報を得られる検査方法です。他に下肢静脈造影検査やMRI などが下肢静脈瘤の検査として一般に行われておりますが、被曝などの欠点もあり、特殊な場合を除き通常は不要です。

4.治療

(1)圧迫療法:弾力包帯や弾力ストッキングを用います。手術や硬化療法の補助療法として重要です。ごく軽度な場合にのみ圧迫療法だけを行いますが、外してしまえば元通りです。

(2)硬化療法:静脈瘤に直接細い針を刺して、硬化剤を注入して固めてしまう方法です。外来において5分ほどで行うことが可能です。手術療法と組み合わせて行うこともあります。硬化療法単独の治療は、ごく軽度な場合にのみ行います。逆に、伏在静脈本幹に逆流がある場合、硬化療法でごまかそうとしても高率に再発し、次の手術にも癒着の原因となって悪影響を及ぼしてしまいます。

(3)手術療法
血管内焼灼術:伏在型の静脈瘤に対し、レーザーやラジオ波といった、細いファイバー(約2mm)を用いて血管内から治療する方法で、現在では下肢静脈瘤の標準治療となっています。従来のストリッピング手術と比べて傷が小さく痛みも少ないのがメリットです。レーザーやラジオ波で静脈壁を焼灼する事により、静脈が閉塞するため、逆流しなくなり静脈のうっ滞が改善します(図3)。2011年より保険適用となりそれ以降新しい機器が開発され、現在波長1470nmのレーザー治療とラジオ波治療が、閉塞率、合併症(疼痛、皮下出血など)の点で優れているとされ、日帰り手術が可能となっています。当院ではどちらも選択可能ですので、血管の状態にあった方法を選択し治療していきます。

レーザー焼灼術:下肢静脈瘤の原因となっている静脈に光ファイバーを入れ、その先端からレーザー光を照射して発生した熱により静脈を焼灼します。焼かれた血管は硬化し細くなり、血流が完全に遮断されます。
高周波カテーテル(ラジオ波による血管内焼灼術):ラジオ波による高周波焼灼術は、1,500℃の高熱を発する従来のレーザーと比較し、最高120℃のより低いカテーテル温度で下肢静脈瘤を凝固閉塞させます。

選択的ストリッピング術(静脈抜去術):古典的な方法で、現在はほとんど行いませんが、いざという時には外科の医師が施術します。
足の二カ所に(足の付け根と膝の内側、もしくはふくらはぎに二か所)、小さな(径1cm)切開を加えて、ワイヤーを伏在静脈に通して大腿部もしくは下腿部裏面(ふくらはぎ)の伏在静脈を抜去します。
こうして、逆流の源を十分に処理してから、膝より下の静脈瘤を硬化療法で固めていきます。
(血管内治療と比べると傷が大きく、痛みが強いため、現在は血管内治療が大半を占めています。)

グルー治療(血管内塞栓術):グルー治療とは、下肢静脈瘤の新しい治療法で、日本でも2019年12月に保険適用となりました。カテーテルを使って瞬間接着剤を静脈内に注入し、圧迫することで血管を閉塞させて逆流を止めるという治療です。グルー(glue)とは接着剤という意味です。
2011年より保険適用となったレーザーによる血管内焼灼術と比べて、血管を焼かないことで、合併症がより少なく、術前の麻酔が不要なため麻酔浸潤時の痛みがないなど、血管閉塞率は同等でからだに優しいといわれています。術後は、弾性ストッキングの着用が不要であり生活や運動の制限がほとんどないため、弾性ストッキングの着用が難しい患者様や、お休みを取りづらい患者様などへの選択が考えられます。

5.下肢静脈瘤手術(血管内焼灼術)の流れ

麻酔方法:静脈麻酔、局所麻酔にて麻酔を行います。(手術中に痛みがでる場合は追加投与が可能です。)
手術方法:まず、伏在静脈内にファイバーを挿入し、足の付け根あるいはひざ裏までファイバーの先端を誘導します。その後、静脈の周囲にTLA 麻酔という非常に薄く希釈した麻酔を注射します(これにより術中術後の鎮痛効果とともに、静脈周囲に麻酔の層を作り、焼灼時の熱傷の緩和、焼灼率の向上が期待できます)。超音波で位置を確認しながら、焼灼を開始します。焼灼にかかる時間は約1~3分です。このあと、膝下の残存する静脈瘤に対し、瘤切除やレーザー焼灼などを行い可及的に静脈瘤を除去します。

※当院では瘤切除にともなう傷をより小さくするために、さらに細いレーザーファイバー(約1mm)を用いて傷を目立たなくする工夫をしています(図4)。

蛇行する静脈瘤に対してもレーザーで串刺し様に焼灼して治療します。術後3~6カ月くらい経過すると静脈瘤は縮小し、目立たなくなります。レーザーの刺し傷はほとんど目立ちません。

術後経過:術後は弾性包帯、弾力ストッキングにより圧迫療法を行います。普段通りの生活をして頂き、安静の必要はありません。翌日には包帯をはずしてシャワー浴が可能です。手術の1~3日後に診察にお越し頂き、超音波にて検査を行います。術後検査が問題なければ無理のない範囲で仕事も可能です。1 週間後の診察で、問題なければスポーツも可能です。術後1カ月間は、日中は弾力ストッキングの着用していただき、めやすとしては術後1カ月、3カ月、半年、1年で診察へお越しください。

6.下肢静脈瘤手術の合併症

皮下出血(2週間程度で吸収されます)、神経障害(ピリピリとした痛み、感覚障害)、血腫、水泡、再発、感染、深部静脈血栓症、肺梗塞、手術の際の麻酔による合併症(麻酔薬によるショック、呼吸抑制、血圧低下による脳梗塞、心筋梗塞、不整脈等)といった可能性があります。硬化療法の合併症としては、塞栓症や、色素沈着がありますが、時間とともに色素沈着は消退していきます。
当院において、これまでに重篤な合併症をおこした患者様はおりませんが、万が一の事態が起きた場合、迅速に対処できる体制を整えています。

7.手術後の痛みについて

下肢静脈瘤の手術後の痛みは状態により個人差がありますが、日常生活範囲の行動はすぐに可能です。術後も歩いて帰宅できます。

8.よくある質問

【質問1】弾力ストッキングを履いたら、足が軽くなり調子が良いのですが。このまま治りませんか?
【回答1】弾力ストッキングは壊れた静脈の逆流を改善し、血流を良くしますが、脱いでしまえば元通りです。補助療法として非常に重要ですが、残念ながらこれだけでは十分ではありません。

【質問2】手術で血管を焼いてしまっても大丈夫なのでしょうか?
【回答2】足の静脈は大きく2 つに分かれます。表面近くの表在静脈と、筋肉の奥にある深部静脈です。このうち大事なのは深部静脈の方で、血流のほとんどを担っています。手術で取る血管は表面近くの表在静脈で、しかも逆流防止弁が壊れている静脈です。せっかく汲み上げられた血液を下のほうに戻してばかりいる悪さしかしていない静脈です。焼いてふさいでしまっても問題なく、むしろ足の血流は良くなります。

【質問3】下肢静脈瘤を放置するとどうなりますか?
【回答3】下肢静脈瘤は慢性進行性良性疾患です。基本的には良性疾患であり、命を落とすことや足の切断などになることは稀です。
しかしながら、ゆっくりと何年もかけて悪くなっていく病気です。捻挫や風邪と違い、放っておいても改善されません。重症化した場合、皮膚の色素沈着(黒くなる)、皮膚の潰瘍化、蜂窩識炎(足が感染により赤くはれ上がる)、血栓性の炎症などが起こります。
弾力ストッキングなどで、進行を遅らせることはできますが、いずれは根本的治療が必要となります。

【質問4】下肢静脈瘤は遺伝しますか?
【回答4】明確な遺伝の原因はわかっておりません。しかし、ご両親が下肢静脈瘤であった場合、お子様も下肢静脈瘤になることが多いと言われております。
質問5.相談をした近所のホームドクターに、きついサポーターでもはいて、様子をみましょうと言われました。様子をみていて大丈夫ですか?

【質問5】相談をした近所のホームドクターに、きついサポーターでもはいて、様子をみましょうと言われました。様子をみていて大丈夫ですか?
【回答5】下肢静脈瘤の病気としての認知度は、医療従事者間においてもいまだ低く、放置しておいて潰瘍や蜂窩識炎が起きてから慌てるといったケースもよくあります。
下肢静脈瘤は、美容外科、皮膚科、一般外科でも診療されることがありますが、手術適応の決定や手術しない場合の管理も、血管外科医の受診をお勧めします。下肢静脈瘤に関連した深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)、先天性静脈疾患などがあり、手術してはいけないケースもあります。また、手術に関しても深部静脈への影響、トラブル対処(血管縫合等)などに熟知していることが必要だからです。
また、弾力ストッキングの処方は、動脈硬化の有無、サイズ、適した圧力などを考慮してなされるものであり、足の動脈の状態の診察も必須と考えます。

費用について

下肢静脈瘤治療について、窓口での自己負担のめやすです。限度額適用認定証などお持ちの方は健康保険証と合わせて受付へご提示ください。

3割負担 備考
初診 約3,000円 初診料+超音波検査
再診 約2,500円 再診料+超音波検査
手術(血管内焼灼術) 約50,000円 肢1本につき
硬化療法 約15,000円 肢1本につき
手術前検査一式※ 約3,500円 胸部レントゲン、採血、心電図など
医療用
弾性ストッキング
約3,500円(保険適用外)

※患者様により手術前に行う検査は異なります。